2012年12月22日土曜日

国芳の系統樹からみる日本近代絵画〜はじまりは国芳展


ここ最近、とみに注目を浴びるようになった、幕末期の浮世絵師、歌川国芳。

国芳には、わかっているだけでも、80人近いの直接の弟子がいたという。その弟子、またその弟子、と辿ると、国芳を起点とした巨大な絵師、画家たちの系統樹が出来上がる。

その系統樹を一堂に集めるという、野心的な展覧会が、横浜美術館で開催された。

横長の大きな浮世絵の中で悠々と泳ぐ大クジラ。画面の半分を占め、小さな人間たちを睨みつける巨大骸骨。

国芳の大胆な構図の浮世絵の数々は、何度見ても、その大胆さに感心させられる。

そして、その一方で、ネコや金魚などを素材に描いた風刺画では、独特のユーモア感覚も遺憾なく発揮している。

国芳の画風のダイナミックさを最も強く受け継いだのは、月岡芳年だろう。

五条大橋の上での義経と弁慶の対決の図、金太郎が大きな鯉にしがみついている図、などは、国芳の影響をモロに受けている。

河鍋暁斎は、幼い時に短期間ながら、国芳の元で絵の修行をしたが、刀や銃ではなく、屁で合戦するという、大胆な発想は、国芳の影響を感じさせる。

日本画の鏑木清方は、国芳の孫孫弟子にあたる。清方の繊細な絵画は、およそ大胆な国芳の絵とは結びつかないが、会場には国芳と清方の全身の美人画が並んで展示されていた。

その清方の弟子である伊東深水の美人画の数々。深水が描く女性は、どうみても現実の女性とは思えない。本源的な女性的な物を描いている。その意味では、抽象画とも言える。

国芳の孫孫弟子にあたる、ポール・ジャクレーという画家は、明治期にフランスから来日し、多くの版画を作成した。浮世絵は、日本人だけのもの、という固定概念を打ち壊され、新鮮だった。

浮世絵から始まり、日本画、洋画まで展示されていたこの展覧会は、国芳の系統樹を辿りながら、日本の近代絵画の始まりを辿る、そんな内容の展覧会だった。

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